専門医が答えるFAQ


新潟薬科大学 薬学部薬学科 教授
恒仁会新潟南病院 血液内科 特任部長 青木定夫 先生
慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)になると、どんな症状が出ますか?
診断を受けて、これから先のことが不安で動揺しています。今後どうなるのでしょうか?
セカンドオピニオンをどう活用したらよいですか?
どうして慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)になるのでしょうか?
生活や食べ物などは関係していますか?治る病気ですか? 再発したらどうなるのでしょうか?
まわりの人に、うつることはありますか? 子どもに遺伝する可能性はありますか?
治療には入院が必要ですか?
仕事を続けたいと考えています。治療しながら働いている患者さんはいますか?
趣味のスポーツを続けてもよいですか?
治療中や治療後に食べるといい食べ物はありますか?
また、日常生活で気をつけるとよいことがあれば教えてください。抗がん剤以外で治る方法はありますか? 民間療法は信じてもいいですか?
家族はどのようなことに気をつければよいでしょうか?
慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)になると、どんな症状が出ますか?
- CLLでは早期から症状が出ることは比較的まれです。健康診断で白血球数の増加が指摘されたり、ほかの病気で診察を受けた際に偶然見つかったりすることが一般的です。少し進行すると、疲れやすい、気力がわかなくなる、原因不明の発熱などが症状としてあらわれることがありますが、高齢の患者さんが多いため、このような症状を年齢のせいにしてしまいがちです。SLLではリンパ節が腫れ、首や脇の下にしこりができることがあります。
いずれも進行した場合は、血液を作る正常な働きが弱まり貧血症状が出たり、出血症状が出たり、感染しやすくなることで、熱が出やすくなる場合があります。またCLL、SLLは女性より男性に多い病気ですが、症状の出方について明らかな男女差はありません。
診断を受けて、これから先のことが不安で動揺しています。今後どうなるのでしょうか?
- 白血病あるいはリンパ腫という病名がついていますが、CLL、SLLはすぐに命にかかわるような病気ではありません。また診断後、直ちに治療が必要とも限りません。さまざまな治療法で病気をコントロールすることが可能ですので、まずは過度な心配をしないでください。
そのうえで、何年か経って治療が必要になることもありますので、専門医を定期的に受診し、経過観察を続けていくことが大切です。以前と比べて非常に疲れやすくなった、体がだるい、発熱が1~2週間も続く、急に息が切れる、動くのがつらくなった、リンパ節が腫れてくる、といった症状が出てきた場合は、主治医に連絡してください。今後については、ある程度予測がつく段階になったときに主治医から説明があるでしょう。とにかく慌てる必要はありません。
セカンドオピニオンをどう活用したらよいですか?
- セカンドオピニオンとは、主治医の説明に対して別の専門医の先生の評価を求めることです。主治医としては、「セカンドオピニオンを求めたい」という患者さんの要望を歓迎することはあっても、気を悪くすることはないはずです。遠慮なくその希望を主治医に伝えてください。
ただ、セカンドオピニオンを得ること自体に時間がかかりすぎると治療のタイミングを逃すことがありますので、ご希望は早めにお伝えください。また、CLL、SLLは日本では非常にめずらしい病気ですので、血液を専門にしている先生であっても必ずしもこの病気に詳しいとは限りません。私が診ている患者さんには、ご希望があればセカンドオピニオンの先生をご紹介することもしています。
どうして慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)になるのでしょうか?
生活や食べ物などは関係していますか?- CLL、SLLの発症原因は不明です。不摂生な生活をしているからなりやすいというわけでもなく、規則正しい生活をしているからならないというわけでもありません。食べ物もこの病気には関係はなく、予防する方法はありません。
タバコやアルコールですら、この病気との関連性を示すデータはありません。ただ、長くつきあっていかなければいけない病気ですから、ほかの病気にならないための禁煙や節酒、健康的な食生活はとても大切です。
治る病気ですか? 再発したらどうなるのでしょうか?
- CLL、SLLは、リンパ球の腫瘍としては最も悪性度の低い病気ですが、完全に治すことがなかなか難しいのも事実です。若い患者さんで、非常に強力な治療をして治癒をめざすというような例はありますが、大半の患者さんは、高血圧症や糖尿病のように病気のコントロールを目標に治療していきます。簡単には治せない病気、つまりそれが慢性疾患だとお考えください。ただし、ある程度病気がコントロールされ、寛解(見た目上はほとんど治ったような状態)に至れば、治療が不要になる方も少なくありません。
もし数年後に再発しても、また同じように病気をコントロールすることは可能です。経過観察をきちんとしていれば、CLL、SLLは手遅れになるようなことはありません。ごくまれに急激に症状が進行する場合がありますので、突然具合が悪くなったら直ちに主治医に相談してください。
まわりの人に、うつることはありますか? 子どもに遺伝する可能性はありますか?
- CLL、SLLはウイルスや細菌が原因となる感染症とは異なりますので、まわりの人にうつることはありません。子どもへの遺伝も必要以上に心配する必要はありません。
ただし、欧米では成人の白血病のなかで一番多い病気のタイプであり、海外の報告ではCLL、SLLの約10%程度に、家族内・血縁内での発症があるのではないかといわれています。このことから、前段階としての軽い異常を含めて、この病気になりやすい体質が遺伝する可能性は否定できません。日本では発症そのものが非常に少なく、家族内・血縁内発症や遺伝に関するデータはありません。またこの問題に関しては人種差が大きいようなので、日本人に関しては今のところ遺伝を心配する必要はありません。
治療には入院が必要ですか?
- 治療が必要になったときに使う薬は、急性白血病に使うような強い薬ではありません。それでもある種の抗がん剤を使うことが多いので、副作用などを考えると、やはり最初は短期間入院していただいたほうが安心だと思います。しかし、必ずしも入院しなければ治療できない病気ではありません。患者さんの年齢や社会的状況、病状を判断して、最初から外来のみでの治療を行うことも可能です。私の施設では、初回治療の際は1週間~1ヵ月、入院していただいております。
仕事を続けたいと考えています。治療しながら働いている患者さんはいますか?
- 初回治療が始まると、退院後も1ヵ月に1回程度の外来治療が約半年間続きます。そのような状況で折り合いがつくのであれば、仕事をやめる必要はまったくありません。個人差は大きいものの、CLL、SLLの治療で使う薬は、仕事に大きな支障があるような強い副作用が出るものは少ないので、仕事の種類に関係なく、続けることは可能だと言えるでしょう。
私が診ている患者さんで、幼稚園の園長さんをされている60代の女性の患者さんがいます。赤血球の値が非常に下がって貧血状態が続きましたが、小さなお子さんが好きなので、働いていることで気がまぎれ、症状も忘れられると、治療を続けながら仕事を続けています。
趣味のスポーツを続けてもよいですか?
- 患者さんに自覚症状がなければ、スポーツは続けていただいて問題はありません。病気が進行し、運動を続けると心臓に負担がかかるほど貧血がひどくなるような場合には、主治医から「運動をやめたほうがいいですよ」と助言されることがあるかもしれませんが、そのような状況に至ることはまれです。
私の診ている患者さんで、週に何回か卓球の練習を続けている方もいらっしゃいます。
治療中や治療後に食べるといい食べ物はありますか?
また、日常生活で気をつけるとよいことがあれば教えてください。- CLL、SLLにいい食べ物や、反対に避けたほうがよい食べ物は特にありません。入院中の患者さんで病院食が口に合わない場合は、お好みの食事をとっていただいても結構かと思います。神経質にならないことが一番大切です。
悪性度の低い病気ではありますが、リンパ球という身体の抵抗力のもとになる細胞の病気です。治療中は薬の影響で抵抗力がさらに落ちる可能性がありますので、日常生活では、人混みにあまり行かない、寒い環境に長時間身を置かないといったことに注意しましょう。ただ、気にしすぎて家に引きこもってしまうのはかえってよくありません。外に出て気晴らしをするのも必要です。
抗がん剤以外で治る方法はありますか? 民間療法は信じてもいいですか?
- 治療が必要な場合、抗がん剤を使わずにこの病気をコントロールするのは難しいと言えます。最近は、狭い意味では抗がん剤と位置づけられない新しい薬も出てきていますので、ほかの悪性腫瘍のような抗がん剤を使わないで治療できることはあるかもしれません。ただ、何の薬も使わないで自然治癒するのは、きわめて例外的な場合を除き、難しいでしょう。
民間療法については、試していただくのは結構ですが、なかにはむしろ有害ではないかと思われるようなものもあります。そのため試す場合は、どんな民間療法かを主治医に知らせていただきたいと思います。内容を伺ったうえでかえって有害であるならやめていただくようお話しすることもありますが、そうでなければ、試していただいても構いません。
※治療方法は主治医や医療従事者にご相談ください。
家族はどのようなことに気をつければよいでしょうか?
- 患者さんと一緒にCLL、SLLについて理解していただくことが何よりも重要です。そのうえで、患者さんの意思を最優先に尊重し、サポートしてあげてください。
ご高齢の患者さんでご本人がどのような治療を望むかを明確に示すことができない場合、家族内のどなたかが中心になって、患者さんと相談して治療体制を整えていただくことが望ましいと考えています。